掲載記事のご案内:「日刊工業新聞」不撓不屈 ② 新分野を求め太陽光進出
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再生エネ着目
日本ベネックス(長崎県諫早市)は精密板金加工技術を基盤に、大型映像装置や電気・電子機器などを製造している。2016年に社長になった小林洋平は、父で現会長の征春が社長だった11年に入社。事業の伸び悩みを打開しようと事業構造の変革に着手した。
小林は二つのプランを検討した。既存事業を縮小しつつムダを省いて利益を出す経営と会社を引っ張る新規事業を立ち上げる経営。前者では発展はないと後者に決め、新規事業について約1年間、頭をひねった。
ピンときたのは、ドイツで開かれた世界最大級の産業見本市「ハノーバーメッセ」を訪れたとき。日本で感じる以上に再生可能エネルギー関連が盛況だった。特に太陽光発電は電気機器の設計技術が生かせると確信する。帰国直後に市場調査を始めて事業案を練り、12年7月に太陽光発電事業に乗り出す。
建物管理に手腕
既存事業で実績や信頼があっても太陽光発電では無名。パネルや周辺機器などの資材調達段階から苦労した。小林は必死になり「世界のパネルメーカーを調べ、売り上げ上位10社に『パネルを売って下さい』とお願いした』と、なりふり構わず行動した。転機となったのは14年10月。千葉県流山市の物流施設に単独でメガソーラー(大規模太陽光発電所)を稼動する。屋根借りで国内最大級の出力2283キロワット。同案件が大きな実績となり資材が購入しやすくなった。入社前に不動産業界とかかわっていた小林は人脈を生かし、建物管理のノウハウを発揮した。現在、太陽光発電事業を自社発電とEPC(設計・調達・建設)の両輪で展開。累計53件、2万キロワット以上の発電所を開発・運営している。
競争力見極めて
日本ベネックスはメーカーでありながら「太陽光発電ではモノづくりをしないと決めて参入した」と意外な方針だったことを小林は明かす。「当然、社内からは理解されなかった」と苦笑いするが明確な理由があった。製品化したとしてもコモディティー化(汎用化)が進み、製品の差別化が難しくなり事業性が下がると読んだ。
ただ通常の生産体制で勝算がある物ならば製品化する。例えばパワーコンディショナーの箱。自社の競争力を冷静に見極め、強みは存分に発揮する。
小林は太陽光発電事業の追い風だった再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)で広がった売電が今後新たな段階に入ると予想。次の展開を見据える。その答えの一つが18年4月に始めた住友商事などとの蓄電池を生かすプロジェクトだ。
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